お通夜が終わり、弔問客は帰った様子。
海老原が本を読んでいる。健志が奥の間からやってきて、風呂場へ掃除しにいく。
幸太郎が朝川をつれてくる。後を追って博とゆかり。
朝川 お騒がせして申し訳ありません。
幸太郎 おまえ、この人に何をいった？
野口 西口にホストクラブができて、どうせしみったれたダセエ男しかいねえだろって。
腰を浮かす朝川。
幸太郎 まあまあ。
朝川 プリプリの。
登美子 プリプリ？
朝川 ホストクラブの名前です。プリンス・プリンス略してプリプリ。
登美子 ああ。
朝川 プリプリの店長は、自分の後輩です。族時代から。
ゆかり 族？
朝川 自分、昔、総長やってたもんで。可愛い後輩バカにされるとつい。
野口 そうとは知らず。
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博 あの、お名前は。
朝川 朝川哲也と申します。
幸太郎 朝川？朝川さんの息子さんですか？
朝川 はい。
幸太郎 照子の弟です。
登美子 誰？
幸太郎 朝川さんのお父さんは、昔、姉さんの婚約者だった人だ。
ゆかり 婚約者？
幸太郎 姉さんはお見合いで朝川さんと知り合い、婚約したが。その後知り合った兄さんと駆け落ち同然で家を出たんだ。
博 母がそんなこと、全然知りませんでした。
幸太郎 お父さんは、今、、
朝川 去年なくなりました。お葬式にはご夫婦でいらしていただいて。父から良く婚約者をトラック野郎に奪われたと聞いていたもので。奥田さんにお会いしたとき敵わないと思いました。父にはないオスとしてのフェロモンというか、すいません下世話な話で。
博 今日のことは？
朝川 奥田さんから、ご連絡いただきました。
博 そうでしたか。
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海老原 小説を書き始めた。ひととおり読ませてもらいました。
海老原 主人公の人妻に対する想いが痛いほど伝わってくる。官能小説という器を借りた純文学です。
朝川 ありがとうございます。
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朝川 不躾なお願いで申し訳ないのですが。この本照子さんの棺の中にいれてもらえないでしょうか。
博 えっ？
朝川 無理を承知でお願いします。この本照子さんに読んで欲しかったんです。一切連絡をしなかった父が、この本は照子さんにお送りしたんです。
博 父が何て言うか。
野口 僕からもお願いします！
登美子 あんた関係ないでしょ。
海老原 俺にも聞こえる。朝川さんの声が。
幸太郎 おまえは黙ってろ。
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太郎 しかし驚いたなあ。まさか、朝川さんの息子だとは。
博 それで結婚式挙げなかったんだ。
幸太郎 さあ、帰るか。
登美子 そうね。明日も早いし。
海老原、ゆかりと一緒にいこうとする。
幸太郎 何でついてくんだよ。
ゆかり もうすぐ家族になるんだから。
幸太郎 バカいうな。
野口 結局誰も僕の傷の手当てしてくれなかったなあ。
などといいながら去る。
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真由美、タッパーを持って現れる。
真由美 明日のおかずにと思って。
健志 余計なことすんなよ。早紀さんもいるんだし大丈夫だよ。
真由美 ごめん。
博 これからも健志のことよろしくね。
真由美 健ちゃんは私にとってお兄ちゃんみたいなもんですから。
真由美、去る。
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早紀 お似合いかも。
健志 え？
早紀 健志さんと真由美ちゃん。
健志 何言ってんの。
博 付き合っちゃえ。どうせ彼女いないんだろ。
健志 決めつけんなよ。
博 えっ？いるの？
健志 いねえよ。
健志 何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪いよ。
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博 父さんさ、ゆうべ、、、いいや、やめた。
忠義 仕事だよ。
博 本当？
忠義 この俺が、お前らに嘘ついたことあるか？
博 あるだろ。数え切れないくらい。
博 任天堂のゲームだって言って花札だったろ。
健志 マイケル・ジャクソンがオリンピック出るぞって言って、マイケル・ジョンソンだったし。
博 父さんの出張話に、口裏合わせたことも。
博 あと、トラックでキャバクラの姉ちゃん送迎してたろ。
健志 スナックで俺のマイク握れって。
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