翌日の朝。
告別式が始まろうとしている。
台所で和尚さんの湯呑みの蓋を探している。
そこに海老原が現れ、照子と話して湯呑みの蓋の場所を聞くと言う。
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早紀 ウェディングドレス。
ゆかり きれい。
登美子 金属類はずしてある。
博 一緒に棺に入れるつもりなんだ。
一同涙がこみあげてくる。
幸太郎 そうか、兄さん、このドレスを注文するために、ホテルの式場へ行ってたんだ。
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朝川がやってくる。ホテルに取りに行っていた忠義もやってくる。行き違いに荷物が届けられたようだ。
忠義 ゆうべは失礼しました。ご挨拶できなくて。
朝川 いえ、自分こそ、お騒がせして。
忠義 お父さん、私達のこと恨んだでしょう。憎んだでしょう。
朝川 いいえ、そんなこと。
忠義 でも、申し訳ないが、私はあなたのお父さんに謝ろうとは思いません。
朝川 はい。
忠義 私は私なりに、照子を大事にしてきたつもりです。
朝川 よかった。あなたが謝りたいなんて言い出したら、殴るつもりでした。
忠義 そうですか。
朝川 今の言葉を聞いて、救われました。父も気持ちが晴れたと思います。
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真由美とヨシノがやってくる。
ヨシノ そんな時代もあったねと いつか話せる日がくるわ。
ヨシノ 昭和が終わりましたな。
博 どうぞこちらから。
一同、奥の間へ。
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忠義はひとり挨拶文を取り出す。
忠義 本日はご多忙中にも関わらず、ご会葬、ご焼香賜り、誠にありがとうございました。妻は、、照子は、、
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忠義 真面目で、優しくて、働き者で、本当によき妻、良き母でした。
おまえは本当によく笑ったね。笑顔が可愛かった。本当に楽しそうに笑うんだ。おまえが笑うと俺は嬉しくなる。
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忠義 おいしいものたくさん作ってくれたね。味噌汁も好きだった。肉じゃがも好きだった。ひじきの煮物も、きんぴらも、カレーも、唐揚げも、みんなみんな好きだった。
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忠義 着物姿が好きだった。うなじも好きだった。おっぱいも好きだった。大きなおしりも好きだった。手も唇も髪をかきあげる仕草もみんなみんな好きだった、、、好きだった、、好きだった。
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忠義 俺がいくまでは、毎年、種を植えるからね。花を咲かせるからね。天国のお前に見えるように。いっぱい大きな花を咲かせるからね。
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忠義 照子、、、ありがとう。俺と一緒になってくれてありがとう。俺と一緒に生きてくれてありがとう。照子、、、照子!
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